人通り・・・

延々延々自分が何処にいるのかわからない森の中
延々延々同じ景色が続いてる様な気がしてしまう森の中

貴方はたった１人か、２人か、３人・・・
決して多くない人数で歩き続けている・・・。
不安が頭を巡りもはや会話もない・・・足も重い・・・。

どのぐらい歩いたろうか・・・遠くの方から声がする。
それも１人や２人じゃない。かなり沢山の人の声だ。
「人だ！」貴方は叫んだ。否、声には出なかったかもしれない。
しかし走っていた。その方向へ貴方は走っていた。

何故こんな所に沢山の人がいるのか・・・そんな疑問が浮かぶ事は無い。
そもそも自分が何故ここにいるのかわからないからだ。
きっと同じ世界に迷い込んだ人達なのだろう・・・貴方はそう思うはずだ。

自分が何処にいるのかわからなくても
進んでいるのか戻っているのかわからなくても
人に囲まれているだけで安心出来る。それが人間。

もう夜の闇に怯える事もないし、森の獣に震える事もない。
飢えに耐えられなければ、周りの人達に頼ればよい。
もう何も心配ない。もう何も恐くない。

どのくらい経ったろうか・・・あれから貴方達は一歩もここから動いていない。
ここにいる沢山の人達の名前と顔が全て一致した・・・
性格や声も全て理解しつくした。それぐらい一緒にいるのに
彼等はこの森から出ようと思わないみたいだ。
貴方なら聞いてみるかもしれない。

「出たいの？思ってもみなかったよ。」
「お前だけ出ればいい。」
「誰かが出れたって知らせを聞けば私も出よう。」
「皆が行くなら行くよ。」

こんなに沢山いるのに１人として同じ事は言わなかった。
出る気はある者、出る気さえ無い者、出る意味がわからない者・・・
少なくとも貴方と同じ意見の者はいなかった。

人通りは他人（ヒト）通りでしかない
貴方の通りは何処ですか？
安心出来る場所が安住出来る場所とは限らない。
世界に１人だけの貴方には貴方の通りがある。
人通りよりも一通り。行ってみればいい。思いつく限りに。

そして、貴方は群れを出た。森から出るのが貴方の道だと思ったから。