大人と子供

夜勤明け・・・雨でトレーニングは中止、風呂入って日頃の疲労を回復すべく
布団に潜り込もうと思った矢先・・・じじぃとばばぁに説教されている甥っ子。

「勉強しろ！勉強しろ！勉強しろ！」

色んな言葉を駆使してたけど、俺にはそうとしか聞こえなかった。
勉強をする事は悪い事じゃない、むしろ万人に認めて欲しいなら間違いなくプラスなものだ。
しかしながら小学校２年生のチビスケに勉強の大切さを教えるのは
どうも酷だと思うんだよな。それより、楽しさを教えるべきなのに・・・。

苛立ち、半ば吼えてるだけのじじぃとばばぁと、意思がなく無言の甥っ子に
イラッとした俺は寝るの中止で甥っ子と向き合って話し合う事にした。

でもね、今のこの空気だと間違いなく説教の延長みたいに思うよね・・・。
って事で「お兄ちゃんは怒ってないよ。何を言っても怒らないから正直に話しな。」
終始それを言い続ける事にした。

８割マンガの小学二年生用の雑誌と、いつも見て笑ってるＴＶゲームの本。
何でこっちは読んでこっちは読まないって事になるの？と聞くと・・・
ずっと無言のまま、最後に捻り出した答えが「なんとなく・・・」だった。
何を教えても、何を一緒に遊んでも、途中で辞めてしまう甥っ子。
その集大成がこのカタチじゃないか！！本気で恐くなった。

知らない事を知ろうと思わない、知るっていう行為がめんどくさいと感じる。
知らない事の方に本当に面白い事があるって事がこの子はわかってない。
自分の小さな頃と重ねてみても、自分は色んなものに興味があったし
この子と同じ時には、すでに遊びの中に努力を意識していた。
仲間はずれにされたくない。友達に自慢したい。女の子にモテたい。理由は様々だけど
努力していた。努力って言葉も意味も知らなかったけどね。

じゃあ、何がしたいの？と問うと無言の末・・・「別にない」という答えが返ってくる。
夢はないの？将来何に成りたいの？と聞いて首を傾げてしまう甥っ子。

これじゃマズイだろ！！！普通に俺は危機感さえ覚えるけど・・・我が家に住まう母親は
どう思っているんだろうか・・・じじぃばばぁは辛うじて感じているのかも知れんけど・・・。

夢なんかなんだって良いんだよ？大きくなくたって、やりたい事で良いんだよ？
お前は何をやってるときに楽しいんだ？何の事で友達と遊んだり話したりしてるの？
夢を持ってない人はお兄ちゃんぐらいの年になって絶対に面白くない毎日を過ごすよ。
いい顔じゃなくなっちゃうよ？友達の前で大きな声で話せない子になっちゃうよ？

小さな子供にもわかるような言葉を頭の中で一生懸命選びながら必死に伝えようとした。
俺が持ってしまった危機感を少しでもチビスケの心にも感じさせる事が出来たら・・・
それしかなかった。夢を持ってないなんて悲しすぎるじゃないか・・・。

涙を流している甥っ子を見ながら、涙の意味が俺の理想のものであってほしいと願いつつ
頭をなでなで、目を見つめ「楽しい事だらけだぞ。」と伝えた。
頷いている甥っ子を見ても決して安心は出来ない、不安だらけの複雑さだけが残った。

布団に入りながら自分の心に釣り針の様に引っかかってる何かに気付いた。
自分が甥っ子に言った言葉の中で相当重かったみたいだ。

夢（やりたい事）があるから頑張るんだよ。
お兄ちゃんの年になっても夢（やりたい事）が何なのかわからない人いっぱいいるよ。
そういう人って面白くないんだよ。自分でもわかってるはずなのに大人は言い訳をするんだ。
今、お前は言い訳が出来るほど言葉を知らないからまだ良いんだよ。
自分に言い訳しなくて済むだろ？だったら今の自分の気持ちを大切にしなよ。
夢（やりたい事）があるから頑張れる（生きていける）んだよ。

大人は言葉を知ってる分、言い訳出来ちまう。
子供は知らないことが多い分、大人よりも柔軟で自由だ。
俺自身にも少し引っかかった言葉だ。少し考えるべき言葉だ。